江戸時代
たとえば、江戸時代には、家臣が仕事の上で不手際をしたら殿様は切腹を命じた。
現代の価値観からすれば、とんでもない人権侵害である。仕事の失敗を理由にして自殺を強要するのであるから。
しかし、江戸時代の諸条件では、それが合理的であった。
まず、武家は軍事組織がベースになっている。そのため、生命を消費することが当然の前提であった。
また、家臣は、生命の他に、価値あるものを持っていなかった。個人としての武士が金銭を持っていることはまれであった。
また、雇用関係が人単位ではなく家単位であった。そのため、現代なら「クビ!」ですむところが、できなかった。クビの場合、家単位での解雇(すなわち、おとり潰し)にならざるを得なかった。
よって、解雇は自殺強要よりも重い処分であった。
通常、本人が切腹すれば、家名は存続(解雇をしない)になった。
したがって、「仕事のうえで不手際をしたら切腹する」のは、「武士が名誉心が高かったから」ではなく、「江戸時代の客観的条件のもとでは、本人が切腹するのが経済的に最適行動であった」からである。
弁護士の場合も、従来の弁護士像には、今日的観点からすると問題があるのだが、これは、その当時の客観的諸条件においては最適行動であった可能性がある。
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